いつかは訪れる実家の相続。いざという時に困らないように対策はしていますか?
何も知らずにいると、会ったこともない遠い親族に相続の権利が発生してトラブルに……、なんてこともありえます。
将来の不測の事態に備え、相続手続きをスムーズに進めるためには、早めの対策が必要です。
この記事では、親が元気なうちにやるべき具体的な相続対策について、対談形式で説明しています。
登場人物
「不動産のことは何もわからないド素人」代表
いけかよ
フリーランス編集長。1980年岡山県生まれ。執筆、編集、Webメディア運営、ワークショップ、プロジェクトマネジメントなど幅広く活動中。現在、あおい不動産アドバイザーズのWeb広報をサポートしている。
あおい不動産アドバイザーズの代表
西川
不動産業務経験30年。仲介、新築販売、賃貸管理、ビル管理、資産管理、買取再販、用地取得など、幅広い実務に携わってきた不動産のプロフェッショナル。
あおい不動産アドバイザーズ シニアアドバイザー
宮本
金融機関、不動産会社、NPOなど様々な業種での勤務経験を持ち、現在は、海外不動産の販売や資産形成の助言、経営・営業のコンサルティング、ファイナンシャルプランニング、事業承継や資産活用の助言、社会貢献活動の助言やコーディネートを行うなど、多方面で活動。
遺言で相続トラブルを防ぐ
いけかよ:私の両親はまだ健在なのですが、いつかは実家を相続すべき時が訪れますよね。私は一人っ子なのですが、両親が元気なうちに何かしておくべきことはありますか?
宮本:ご両親に兄弟姉妹はいますか?
いけかよ:母は一人っ子、父は4人兄弟です。
宮本: 例えば、お母様が先に亡くなった場合、通常はご実家をお父様といけかよさんで相続しますよね。そして、その後にお父様が亡くなった際には、何も対策をしていない場合、お父様の兄弟にも相続の権利が発生します。
いけかよ:父の3人の兄弟のうち、2人はもう亡くなっているんです。そうなると……?
宮本:お亡くなりになったご兄弟のお子様にも相続の権利が発生します。
いけかよ:私の実家なのに、父の兄弟の子どもにまで相続の権利があるとは……!
宮本:そういったことを防ぐためには、お父様に「この家は我が子にやるんだ」と遺言に書いてもらうと安心です。お父さんの兄弟は、遺留分を主張する権利はないので。
いけかよ:なるほど!
宮本:ご両親が遺言を一筆書くことで、解決するケースはよくあります。
いけかよさんの場合、お父様が先に亡くなって、その後お母様が旅立たれた場合は、遺言が無くても特に問題なく、ご実家はいけかよさんに相続されます。
こんな物騒な話をするのもあれですが……。例えば、ご両親が交通事故や災害に見舞われて同時に亡くなった場合は、ちょっとややこしいことになります。
面倒が発生するのを一切排除しておきたい場合は、ご両親が元気なうちに、遺言に「我が夫婦の財産は娘が全部相続する」と書いてもらうのが安心かなと。
いけかよ:ぜひそうしてもらいたいですね。私が生まれ育った実家は、両親が旅立っても、自分の居場所として持っておきたい気持ちがあるんですよね。2拠点生活みたいな感じで。だから遺言を一筆書いてもらって、将来的には私の所有になるようにしてもらいます!
西川:早めに遺言を書いてもらった方が良いです。お父様のご兄弟やそのお子様は、ご実家には全く関係のない方ですよね。 だけど、法律上は相続の持ち分が発生する可能性があるので。普段連絡を取り合わないような人たちに相続の持ち分が発生すると、揉め事の原因になります。
「遺言」は「遺書」とは全く別のもの
宮本:日本人は、「遺言」を「遺書」だと思ってしまう方も多いようです。そのため、遺言を書くことは、近い将来を暗示してる……と想像しがちなのですが。本来、遺言と遺書は全く別ものなんです。
遺言は、今のところこうしたいと思っていることを記しておくこと。そして、遺言はいつでも上書きできて、後に書いたものが優先されます。
例えば、「今のところ、可愛い娘に全てを相続する」と遺言を残しても、ある日娘と喧嘩になり「娘には何も相続させない」と書き直すこともできるわけです(笑)。
いけかよ:じゃあ、遺言には日付も書いてもらった方が良いですね。
西川:不動産の相続を遺言に書いてもらう場合には、地番が明記されていて、その場所が特定できないといけないとか、ルールが細かくあります。
宮本:これはAに、これはBに、これはCにと、相続財産を分ける場合は、細かな特定が必要ですが、「相続財産は全部Aにあげる」と書いてもらえれば問題ないですけどね。
いけかよ:そっか!「相続財産は全部娘にあげる」と書いてもらいます!
相続税は必ず払う訳ではない
西川:いけかよさんは一人っ子なので、相続トラブルが発生する可能性が非常に低いですね。そのほか、心配しておかなければいけないのは、 税金のことです。相続税がどのくらいかかるのか、早めに確認しておいた方が良いですよ。
いけかよ:財産をもらうには、相続税を払わないといけないんですね……。
西川:相続税は資産の金額によって決定します。
いけかよ:私が相続するのは、きっと実家の家と土地位かな。先日、実家をリフォームしたので現金はあまりないと思うので。
宮本:相続財産が、現金はあまりなくて、不動産ばかりという方が割と多いのです。そして、それが大変なんです。
相続財産の中にある程度の現金があれば、そこから相続税を払うことができます。しかし、現金がなく不動産を相続する場合、納税資金として自分で現金を用意する必要があります。それが用意できない場合、相続した不動産を売却するなどの手段を考えなければいけません。
そのため、相続する側が相続財産として現金をどのぐらい用意するのか、あるいは相続される側が自分で納税資金を用意しておくのか、何かしらの資金準備が必要です。
ちょっと脅かしましたけど、実は日本全国で相続税を払っているのは8%なんです。
西川:100人の相続が発生したら、その内の8人しか相続税を支払う必要はないということです。
宮本:残りの92人は、相続税を払わない。なぜかというと……。
西川:相続税には基礎控除があって、その範囲内であれば、相続税を払う必要がないからです。基礎控除は3000万円です。ですので、相続物件の評価額が3000万に収まっていれば、他に資産がない場合、不動産に関しては相続税が発生しないのです。
いけかよ:財産がたくさんある人しか相続税を払う必要がないってことか。ちょっと安心しました。
西川:もし、いけかよさんのお母様が先に亡くなられて、お父様といけかよさんが相続人になった場合、3000万の基礎控除の他に、1人600万円ずつ控除がプラスされます。
ですので、その場合、全ての資産を含めて4200万円以内であれば、相続税はかからないし、申告も不要です。
いけかよ:きっと私は相続税を払う必要はなさそうだな。ちなみに、不動産の評価額はどうやって調べれば良いでしょうか?
西川:毎年届く固定資産税納税通知書の課税明細を見ると、ざっくりとした相続税の評価額がわかります。
ただ、固定資産税納税通知書の課税明細は固定資産税の課税明細であって、相続税の課税明細ではありません。そのため、土地の場合は簡単な計算式を使い、おおよその相続税の評価額が確認できます。
そして建物に関しては、課税明細に書いてある金額がそのまま相続時の評価額になります。
宮本:相続税を払う必要があるか否かは、大きく分けると3つの可能性があります。
1つめは、相続が発生しても、相続税は一切かからないケース。
2つめは、絶対に相続税を支払うケース。
3つめは、その時の評価によっては、もしかしたら相続税を払わなければいけないし、払わなくてもいいかもしれないケース。
西川: 自分がどのパターンに当てはまるのか、ざっくりとした感覚を持っておくと良いですね。
(対談ここまで)
早めの相続対策で家族の安心を確保しよう!
将来の不測の事態に備えるためには、早期の準備が不可欠です。資産を確認するとともに、遺言書の作成などの具体的な対策を考えておくことをおすすめします。
親が元気なうちに、親の気持ちを慮りながら、子どもたちが率先して相続対策に取り組むことで、円満な相続を実現することができます。
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