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セミナー

2024年03月21日

【イベントレポート後編】遺品整理のプロに聞く!生前整理の最前線

前編では、遺品整理・生前整理のプロである河田さんから実例を交えて生前整理の始め方やメリットを教えていただきました。
後編ではトークセッションとして我々あおい不動産アドバイザーズや参加者の方からの素朴な疑問を河田さんにお聴きしました。今すぐにでも始められそうな有益な情報もいただきましたので、その様子をお伝えします!

【ゲスト】

河田 昇永(かわだ しょうえい)さん

1982年生まれ。東京都大田区出身。
16歳から実家(医療・産業廃棄物収集運搬業)で働き始める。
父が他界したことにより会社を閉め、ヤマト運輸にてセールスドライバーを務める。
平成25年1月、紆余曲折しつつも独立開業。
平成30年12月、株式会社昇永を設立。
現在、郵政グループと共同にて生前対策についてのセミナーやイベント活動を行う「一般社団法人家族想い」の理事を務める。

【聞き手】

西川 英貴(にしかわ えいき)

株式会社あおい不動産アドバイザーズ 代表
平成元年 大京住宅流通(現大京穴吹不動産)入社。
21年間にわたり仲介営業の実務経験を経て、建売戸建仲介業者、銀座・新橋のビル管理会社、都心のビルを売買・管理する不動産投資会社に勤務。
平成30年4月、株式会社あおい不動産アドバイザーズを設立。

【モデレーター】

いけかよ

あおい不動産アドバザースのWeb広報をサポートするフリーランス。

現在は関西在住だが、離れて暮らす田舎の年老いた両親と持ち家のことが気になりはじめた40代。

両親と一緒に生前整理を進めるときの心得

いけかよ:イベントの前半部分で、「勝手に捨てないことが大事」というお話が出ていましたが、両親と生前整理を進めるときのNGワードって何でしょうか?

河田さん:そうですね、「捨てる」という言葉は極力使わないほうが良いんじゃないかと思います。お子さんにとってはゴミに見えるものでも、ご両親にとっては大切なものだったりしますから。そういう時に「捨てちゃおう」とか「これもいらないよね」などと言ってしまうと、ゴミじゃないんだからと反感を買ってしまうことになりかねません。片付けが進まないと元も子もないですよね。

いけかよ:なるほど。つまり「片付けを強要しない」ということですね。

河田さん:そうです。例えば、以前こんな興味深い事例がありました。3LDKにお一人でお住まいの高齢の方をケアマネージャーさんから紹介いただき訪問しました。その方は全く片付けられない方で、荷物が溢れかえっていました。片付けることに嫌悪感があったようで、私を見るなり「片付けなんかしないよ、なんで呼んだんだ」と罵倒されました。

そこでなんとか「寝るところがないから寝室だけ片付けさせてください」と説得して、寝室の1か所だけ片付けさせていただいたのです。そしたら人が変わったように「部屋がきれいになるのはいいね」「次は台所もやってもらおうか」ということになって、結局全部片付けることになりました。

このようなケースは1件だけではありません。部屋の状態は心も映し出すといいますが、最初は嫌がっていても、部屋がきれいになることで部屋の持ち主の心も段々すっきりされていくように感じます。片付けを少しずつ進めることが、ちょっとずつ気持ちの整理にも繋がるのですね。焦らず、ゆっくり進めていくことが大事です。

できるだけ遺品整理でお金をかけないために

いけかよ:前回、生前に整理することが残された家族のためにも大切だという話をされていましたが、やっぱり実際に多額のお金がかかるのでしょうか?

河田さん:そうですね。生前のうちに片づけられなかったそのままの部屋をまとめて片付けるとなると、それを整理して処分するには多額な金額がかかります。それが多くの方が一番相続で困ることなのです。

だからこそ生前整理をしておくことが大切です。家族でコミュニケーションを取り、まずは自宅の状況を把握すること。そして、物が落ちてくる危険性や片づけることでより良い住みやすさに繋がることをご家族に理解してもらう、という風に進めていきましょう。

いけかよ:参加者の方からの質問です。万が一のことが起きた場合、できるだけ費用を抑えたく、燃えるゴミの日に少しずつ出しています。ですが、親戚にはそんなことしても骨折り損だと言われます。少しでもゴミを減らすのが処分費用を節約するコツでしょうか?

河田さん:おっしゃる通りです!全く骨折り損ではないです。実は一番費用が高くなる理由は分別なんです。仕分けや分別は業者側で大きな手間がかかるので料金がかさみます。燃えるごみなど自分で出せるものを出しておき、粗大ごみなど大きいものだけ残しておくだけでも料金がかなり抑えられますよ。

一見無価値と思うものでも必要とされたり、お金になることも

あおい不動産アドバイザーズの西川からも、片付けに関してこんな意見が出ました。

西川:最近、相続案件で移転のため家の中を片付ける案件があり、医学書が本当にたくさんあって困っておりました。しかし、なんと施設の図書館で使用するということでNPO法人が回収してくださったのです!

一方、名古屋の相続案件でもマンションの200平米の室内に家具家電、絵画や書籍など大量の物の処分があり、処分費用が100万ほどかかりました。

やはり処分には手間や時間だけでなく、費用もかかるのだなあと感じました。

河田さん:本当にそうなんです。そして、意外とご自身では無価値と思っていたものでも、欲しがる人や買い取ってくれる人がいることも多いですね。遺品整理になると時間や心の余裕がない中で急いで片付けないといけないですが、時間に余裕があるときであれば査定に出したりもできますよね。業者やメルカリなどの活用もおすすめします。

元気なうちに片付けよう

いけかよ:こちらも参加者の方からの質問です。老人ホームに入った両親の実家のものをお嫁さんがどんどん片付けているのですが、ありがたい反面さみしさもあります。まだ存命でもどんどん片付けるべきでしょうか。

河田さん:私としては、遺品整理の現場でお困りの家族を多く見てきているので、荷物が減っていくことは悪いことではないと思います。もちろん、双方が納得いく形で片づけていっていただくことは大前提ですが、ものは少ないほうが後々楽になりますよ。

いけかよ:河田さんがお仕事をされていて印象に残っている案件はありますか?

河田さん:ちょうど今進行中なのですが、親と疎遠になり孤独死をされた事案で、物量がものすごい量の案件があります。部屋という部屋が通路から天井まですべて埋まっているような状態で最初は中にも入れませんでした。

お子さんはご結婚されてコミュニケーションがあまりとれていなかったようで、このような状態であったことを現場で見て泣かれていました。
やはり両親の状況というのを知っておく、理解しておくことは非常に大事なことだと痛感しましたね。

いけかよ:生きている元気なうちに片付けするか亡くなってお金を払って片付けをするか、ですよね。

西川:生前整理はお金の問題ではないですよね。河田さんのお話を聞いて、生前整理はシンプルに物が少なくなって快適な暮らしに繋がるとわかりました。

一方で、いざ亡くなってしまってから全部片付けしないといけなくなると、お金でしか解決できなくなりますね。

私の経験では、処分費用というのは、ただ安いだけの業者に頼んでしまうと、もしかしたら不法投棄されて産業廃棄物処理の責任が自分に来てしまう、といった恐れがあります。処分についても色々な決まりがありますから、きちんとした業者さんに頼まなければいけないと思いますね。

いけかよ:確かにそうですね!プロから見る良い業者の見極め方や、選び方のポイントはありますか?

河田さん:やっぱり紹介が良いと思っています。インターネットには格安な業者もありますが、全てが良い業者とは限りません。不法投棄の危険性もあったり、終わってみたら請求額が2倍になっていたのにもかかわらず無理やり支払わされたりという事例もあります。もちろん信頼できる会社さんもありますので、トラブルを回避するためにも紹介で探すことをおすすめします。

生前整理で心も豊かに

多くの遺品整理の現場を見てきている河田さん。生前整理の大切さと同時に親とのコミュニケーションの大切さを何度もお話しされていたことが印象的でした。
河田さんによると、残された家族が遺品整理で困る事例の多くが親とのコミュニケーション不足とのこと。

普段なかなか切り出しにくい話題かもしれませんが、元気なうちに始めることで、老後の生活が快適になるなどのメリットもあります。今回話に出たように、まずは不用品の分別をしたり、身の回りの不用品を売ってみたりすることも立派な生前整理のひとつ。年末年始や帰省などの機会に、ぜひ一度話し合ってみてはいかがでしょうか。