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2023年01月17日

それは相続してよい不動産?②「境界が不明の土地」

あなたはご実家とお隣との境界がわかりますか? 

「塀がお隣との境界じゃないの?」 

そう思われる方が多いと思います。しかし「実家の土地を売却しようと思ったら、ブロック塀が境界ではなかった…」なんてケースもあるのです。 

今回は事例を元に、相続税評価額よりも実際の価値が下がる可能性のある不動産として「境界が不明な物件」をご紹介します。 

土地の境界とは?  

境界とは、不動産登記された土地の地番と地番の境目のこと。一般的には、自分の土地と隣地や道路との境目を意味します。 

土地を売買する時には、取引する土地の範囲を明確にする必要があります。不動産売買契約書には「売り主は買い主に対し、本物件引き渡しの時までに、現地において土地の境界点および境界線を明示しなければならない」との条文が盛り込まれているのが一般的です。 

土地の境界はどうやってわかる? 

通常、境界には境界標があり、杭(くい)が打ってあります。 

しかし、なんらかの理由で杭が抜けてしまって、境界が不明確なケースもあるのです。 

境界が不明な物件は市場価格が低くなることもある 

相続した不動産を売却しようと思った時に、「境界だと思っていたところが実は違った…」なんてトラブルもよく耳にします。 

境界は自分だけではなく隣地の保有者との問題なので、土地を売却する際には、双方の納得が必要です。 

万が一、隣地の所有者が土地の境界に納得しない場合は、買主は自力で境界の問題を解決しなければなりません。自力で解決すると言っても、力のある宅建業者に頼るなど、知識のあるプロの力が必要なので、それなりの費用がかかります。 

【事例】利用上の境界と実際の境界が異なる場合もある 

アドバイザー:「上の図を見てください。A地とB地の間にブロック塀があります。一見このブロックが土地の境界だと思いますよね。しかし、後にこの土地は杭が地中に埋まっていることがわかり、筆界(登記上の境界線)は点線の部分だったことが発覚したのです。」 

相談者A子:「我が家にもブロック塀があるけれど、塀が土地の境界にならない場合もあるのですね  

アドバイザー:「ブロック塀の上や側に『境界標』があれば、そこが境界です。そうでなければ塀が越境している、または境界標が抜けてしまった可能性もあります。元々の土地の所有者は境界を知っていたけれど代が変わるときに伝わっていなかったとか、建て替えの際にブロック塀は撤去する取り決めの覚書があったけれどそれがお子さんに引き継がれていなかった、などの理由が考えられます」  

相談者A子:「両親が元気なうちに、境界の確認やお隣さんとの約束事を確認しておかないといけませんね。杭って木ですか?」 

アドバイザー:「杭は木もあれば、コンクリート、金属、プラスチックもあります。まず『境界標』を探してみてください」  

石杭
コンクリート杭
金属標

(画像:法務省HPより引用)  

相談者A子:「プラスチック?あっ、それもしかして私が抜いちゃった?…(汗)」  

アドバイザー松:「万が一、お隣との境界がわからなくなってしまった場合は、土地家屋調査士に依頼して復元することも可能です。 

ちょっと複雑ですが、B地所有者がaを、A地所有者がbをお互いに売買する方法、または双方がaとbの価値が等価だと合意した場合は「固定資産の交換特例」を利用することで、資金なしで本当の境界と利用上の境界を一致させることも可能です。

 しかし、一般のご家庭では、そこまで時間も費用をかけられないかもしれませんね」  

相談者A子:「実際の境界を確認する方法や境界を変える方法はあるけど、それなりに時間とお金が必要なのですね」  

アドバイザー:「法務局の資料を元に登記官が行う『筆界特定』という制度もあります。しかし、これは実際の境界の筆界線の特定はしてくれても、杭までは打ってくれません。また、相手の同意がなくても特定できますが、裏を返すと相手に納得してもらえないこともあるということです。

 境界を復元や変更する時には、お隣さんとの合意が必要不可欠です。『お隣が空き家で連絡がとれない』なんてことも考えられます。相応の時間と手間がかかるので、とにかく早めに確認しておくことをおすすめします」  

相続が訪れる前に、ご実家の境界を確認しよう 

相続した不動産を売却する時には、土地の境界を明確にする必要があります。 

相手方の立場を考えれば当たり前ですね、自分が買おうとしている不動産は一体どこからどこまでなのか、確認したいでしょう。

建物が境界を超えていたり、地下に埋設された水道管や排水管などが他の敷地を通っていたり、「越境」している場合は売却時のトラブルに繋がるケースも少なくありません。 

また「越境」がある物件は、住宅ローンが承認されないケースもあります。 

境界が不明な場合、調べるのには多くの時間とお金が必要です。今すぐにでも、ご実家の境界を確認してみてくださいね。

筆者:松橋 輝彦(まつはし てるひこ)

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