「不動産のこと、全然わからない……」
そんな方も実は多いのではないでしょうか?
都市部ではどんどん新しいマンションが建設される一方で、地方では空き家が増えている。
いったいどうしてなのでしょうか。
今回は「堅い」イメージの不動産を、もっと身近に感じていただけるように、対談形式で説明していきます。
第1回目のテーマは社会問題にもなっている「空き家」についてです。
登場人物
「不動産のことは何もわからないド素人」代表
いけかよ
フリーランス編集長。1980年岡山県生まれ。執筆、編集、Webメディア運営、ワークショップ、プロジェクトマネジメントなど幅広く活動中。現在、あおい不動産アドバイザーズのWeb広報をサポートしている。
あおい不動産アドバイザーズの代表
西川
不動産業務経験30年。仲介、新築販売、賃貸管理、ビル管理、資産管理、買取再販、用地取得など、幅広い実務に携わってきた不動産のプロフェッショナル。
あおい不動産アドバイザーズ シニアアドバイザー
宮本
金融機関、不動産会社、NPOなど様々な業種での勤務経験を持ち、現在は、海外不動産の販売や資産形成の助言、経営・営業のコンサルティング、ファイナンシャルプランニング、事業承継や資産活用の助言、社会貢献活動の助言やコーディネートを行うなど、多方面で活動。
近年は「新築マンション」も「空き家」も増えている
いけかよ: 街中で建設中のマンションをたくさん見かけるのですが、最新の不動産業界の傾向が知りたいです。
西川: 去年1年間の首都圏全体の新築分譲マンションの供給数は2万9000戸弱です。(※2023年1月時点)
一昨年のデータと比較すると、約12%増えており、マンションの価格もまあまあ上がっています。
宮本:ピーク時の平成2〜3年頃は、年間8万戸ほどマンションが供給されたこともありましたよね。ただ、住宅の供給が増えているけれど、空き家も増えているのが現状です。
いけかよ: 新しいマンションが増える一方で、空き家も増えている。どうしてそんなことが起こるのでしょうか?
西川:建設業者は、家を作るのが仕事なので、毎年家を建てるんですよ。
毎年80万人弱減る人口。空き家の数は1000万戸超え?!
宮本:人口は2008年あたりから減少局面に入りました。
もっとも、世帯数が減少しはじめるのは実は来年くらいからと言われています。
西川:不動産は、人口ももちろん関係しますが、世帯数で需要が決まります。ちなみに、住宅の戸数から世帯数を引いたのが、空き家の数です。日本全国の住宅総数は約6,250万戸と言われており、世帯数が約5,400万世帯ですから差し引き850万戸が空き家となるのです。
宮本:人口は減っているけれど、1人暮らしや2人暮らしの世帯は増えています。なので、必ずしも人口が減ったからといって、世帯数も減る訳ではないのです。
また、都市部と地方では、人口や世帯数の減少局面に入るタイミングも異なります。
近年、東京都はコロナで転出が増えたため、人口流出局面に入っていました。しかし、去年の統計を見ると、東京に人が回帰していて、明らかな人口減少局面には入っていないし、 当然、世帯数減少局面にも入っていない状況です。もちろんいずれは東京の人口や世帯数も減っていくと思いますが。
いけかよ:なるほど。全体的な人口減少の影響で、近い将来、東京も人口や世帯数が減っていくということですね。でも、地方はもっとやばいですよね……。
西川:そうですね。昨年は年間で158万人の人が亡くなられています。一方で出生者数は80万人弱、差引しますと昨年一年間で日本の人口はおよそ80万人減少したことになります。 毎年人口が減っているんです。今後もそのペースはしばらく続くだろうし、近い将来は、もっとペースは上がっていくでしょう。
そうなると、使う家の数はさらに減っていきます。 5年に一度出される総務省の調査によると、2018年のデータでは、日本全国で約850万戸の空き家があると言われています。
宮本:これは5年ほど前の数字なので、今の状況を推計すると、空き家の数は1000万戸を超えていると思われます。
ちょっと余談ですが、空き家が増えているにも関わらず、住宅を借りにくい人たちもいるんです。たとえば、生活困窮者、ひとり親家庭、障がいをお持ちの方、外国籍の方……。空き家があるのにも関わらず、家が借りられない人がいるという、歪みが起きているんですよね。
いけかよ:どうしてそんな歪みが起きるのでしょうか?
宮本:家賃が高くて借りられないなどの金銭の問題というよりは、払えるのにも関わらず、本当に払えるかどうかの審査ができないとか、保証人になってくれる方が見つからないとか。高齢者の方だと、孤独死のリスクがあることが原因になったりします。
いけかよ:高齢者も増え続けていますよね。高齢化が空き家問題に繋がっていたりもするんでしょうか?
宮本:そうですね。1人暮らしの高齢者が亡くなった時に、なかなかその家の片付けが進まない。そういった問題を先送りにした結果、放置され、建物の老朽化が進み、リフォームをしないと使えなくなる。だけど、普段使わない家に、お金をかけられないという話になり、 さらに放置が進む……みたいな。なので、都市部の一等地でも空き家問題は起こっています。
空き家の放置は良いことなし!
宮本:空き家に不法占拠者が入って、何か問題を起こしたり、災害時に老朽化した建物の屋根や壁が飛んで、誰かに危害を加えたり、なんてことも起こりえます。
空き家の放置は良いことがないんです!
西川:基本は、その物件の所有者しか中に入れないので、行政の人が空き家に勝手に立ち入ることもできないですしね。
宮本: 所有者が行方不明というケースもあります。所有者が1人で、その方が行方不明の場合は、対処方法がありますが、相続物件で子どもや孫が複数で所有者になってる場合、その内の何人かと連絡が取れないこともあったり……。日本は所有権を複数人で共有できるので、厄介ですね。
西川:建物全体の維持管理や安全確保のための修繕などを行う時には、所有者全員の意思確認が必要なので。
宮本:明らかに必要な修繕費や維持管理費を所有者の1人が立て替えることはできます。ただ、建て替えとか、増築とか、売却とかは意見が分かれるので、所有者1人の意思で勝手に決断できないですよね。
いけかよ:空き家が増えて、さらにそれが老朽化していくと、いろいろな問題が起こりそうですね……。
西川:ここ10年位で、徐々に空き家の増加が社会問題としてクローズアップされるようになりました。そして、ようやく「空家等対策特別措置法」ができました。この法律ができたことで、行政が特定空き家に指定した空き家に関しては、 場合によっては、第三者が立ち入ることもできます。
いけかよ:増え続ける空き家を解決する手段が全くないわけではないのですね。
西川:そうですね。ただ、全然間に合っていないのが現状です。
宮本:空家等対策特別措置法も、新たに誕生した空き家は対象外です。空き家を持っていて良いことはありません。だから、将来空き家になる可能性の高い不動産を実家のご両親がお持ちの場合、早めに対応しておくことが大切です。例えば、複数人で共有している不動産を持っている場合は、その不動産を将来的にどうしたいのかを予め考えておいた方が良いでしょう。
空き家を放置したところで、すぐに問題が起きる訳ではないから、とりあえず保留にしてしまう。しかし、それを数年間放置してしまうと、さまざまな面倒なことが起きてくる。ちょっと先に訪れる未来を想像して、早めに対策しておくことが大切です。
(対談ここまで)
将来、空き家になる可能性の高い不動産はありますか?
空き家を放置して、良いことは一つもありません。
まずは、将来的に空き家になる可能性の高い不動産の有無を確認してみましょう。
そして、もしある場合は、共有の持ち分があるのかを確認すると共に、売るのか、何かに活用するのか、どのような選択肢があるのかを事前に考えておきましょう。