皆さんは「生前整理」という言葉をご存じでしょうか。生前整理とは、いわば「終活」の一種で、自身の死後に残された家族に負担がかからないよう、文字通り生前に身辺や財産を整理することです。
ご自身ではもちろん、親御さんの生前整理についても、いずれお迎えがきたときに大変な思いをしないよう、できれば元気なうちに向き合っておきたいことのひとつです。
ですが、「あまりピンとこない」「親と生前整理を始めてみたいが、どう話し合えば良いかわからない」「何から手を付けてよいのかわからない」などと躊躇してしまっていませんか?
あおい不動産アドバイザーズの代表、西川は不動産だけではなく相続に関するコンサルティングも行っています。不動産会社がなぜ相続相談も行っているかというと、不動産と相続は切っても切れない関係にあり、遺贈寄付や空き家などの相談に接する機会も多くあるからです。相続対策専門士や空き家相談士など様々な資格を取得するのみならず、相続関係のプロの方々と連携し日々皆さまの様々な悩み事の解決をさせていただいております。
そんななか、今回は皆さんの身近な問題と思われる「生前整理」をテーマに、生前整理・遺品整理のプロである株式会社昇永の河田さんに生前整理の大切さや生前整理を始める際のポイントをお伺いしました。生前整理の意外なメリットも教えていただきましたので、まずはイベントの前半をこの記事でレポートしたいと思います!
【ゲスト】
河田 昇永(かわだ しょうえい)さん
1982年生まれ。東京都大田区出身。
16歳から実家(医療・産業廃棄物収集運搬業)で働き始める。
父が他界したことにより会社を閉め、ヤマト運輸にてセールスドライバーを務める。
平成25年1月、紆余曲折しつつも独立開業。
平成30年12月、株式会社昇永を設立。
現在、郵政グループと共同にて生前対策についてのセミナーやイベント活動を行う「一般社団法人家族想い」の理事を務める。
【聞き手】
西川 英貴(にしかわ えいき)
株式会社あおい不動産アドバイザーズ 代表
平成元年 大京住宅流通(現大京穴吹不動産)入社。
21年間にわたり仲介営業の実務経験を経て、建売戸建仲介業者、銀座・新橋のビル管理会社、都心のビルを売買・管理する不動産投資会社に勤務。
平成30年4月、株式会社あおい不動産アドバイザーズを設立。
【モデレーター】
いけかよ
あおい不動産アドバザースのWeb広報をサポートするフリーランス。
現在は関西在住だが、離れて暮らす田舎の年老いた両親と持ち家のことが気になりはじめた40代。
遺品整理で苦労しないために
ご自身も22歳という若い時にお父様を亡くし、遺品整理で大変な思いをされたと話す河田さん。残された家族3人での遺品整理に半年もの時間を費やしたそうです。
河田さんのお父様が自営業で大きな倉庫を持っていただけでなく、思い入れのある物を整理して処分していくことに大変な労力と時間を要したのだとか。
同じように、遺品整理で大変な思いをされている方は決して少なくありません。河田さんがこれまで経験してきた遺品整理の一部を紹介してくれました。
上記のようなケースは、そこに住んでいた方がお亡くなりになったために、そのお子さんからご依頼をいただくことがほとんど。依頼者であるお子さんは、長年親とのコミュニケーションを取っておらず、亡くなって初めてこのような状況を知り愕然とすることが多いのだそうです。
(河田さん)「翻って、ご自身の遺品整理は誰がやってくれるのか想像してみてください。何年後に、どんな風に?やはりご家族に負担がかかってしまうのではないでしょうか。これだけ大変だからこそ、いかに家族に負担をかけないようにしておくかはとても大事なことではないかと思っています」
河田さんによると、持ち家などで10年以上引っ越しをしていないお家は、遺品整理で苦労しやすい傾向にあるそう。こうしたお宅は独立した子供の荷物や若いころの服をしまいこんでいたり、使用していない子供の部屋などのスペースがあるからと通販で服や健康器具を買ってしまいがち。お心当たりのある方もいるのではないでしょうか。
しかし、生前整理が必要な理由は、こういった遺品整理の大変さを少しでも和らげるためだけではありません。最近は生前整理の意味や目的が、家を片づけることで自分や家族が明るく豊かな老後を過ごすため、という前向きなとらえかたになってきているのです。
生前整理の進め方
それでは、実際どのように生前整理を進めていけばよいのでしょうか。河田さんが自分で生前整理をやってみる場合の簡単な3つのコツを教えてくれました。
①お家の中を再確認!
長年住んでいる家であれば部屋の間取りやどこに何があるかは頭に入っているはずですが、河田さんによると実際に見取り図を描いてみたり、写真を撮ってみることが意外と重要なのだそう。まずは家の中を再確認することによって計画的に片付けができるのだそうです。これなら今すぐにでもできそうですね!
②不用品の処分についてチェック!
2番目のコツは、不用品の処分について確認しておくこと。不用品といっても、ゴミではなく実はリサイクルできたり売れたりするものがたくさんあるのだそうです。
(河田さん)「例えばお洋服、お子さんの使っていたおもちゃなど一般の方が利用しやすいリサイクルショップがたくさんありますので、ご自身で持ち込んでみましょう。また冷蔵庫や洗濯機などは製造から5年以内のものは値が付きやすいです。
一方で家具は売れにくい傾向にありますので、大型ごみの出し方をチェックしておきましょう」
捨てるのは勇気が入りますが、リサイクルしたり売るのはハードルが低くなりますよね。まずは売れるものの処分を行い、その他売れないものをごみとして捨てる場合は地域のルールをもう一度確認しておきましょう。
③一日一か所でOK!カンタンな所から少しずつ!
最後のコツとして、「いっぺんにやらないこと」と話す河田さん。「一日でも早く終わらせようと頑張ると疲れてしまい、もういいやとなってしまって続きません」
生前整理や断捨離は本当に労力がかかるので、今日はここだけという風に決めて、少しずつ少しずつ始めることが長続きのコツだそう。ちなみに、納戸や押入れは物が多いうえに、思い出の物など判断に困るものが多く難易度が高いので、慣れてきてから手を付ける方が良いとのこと。ついつい物が多いところから整理したくなりがちですが、気をつけないといけないですね。
生前整理における注意点
3つのコツを聞き、なんだか自分にもできそうと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし「ご自身で生前整理をやっていくにあたり、注意しておくべき点もあります」と河田さん。
(河田さん)「まず第一に、安全第一を心がけるということです。タンスの上の物を取ろうとして椅子に乗って落下してしまったり、重いものを持ち上げて腰を痛めないよう気を付けてください」
片付け中の物に躓かないよう、一日一か所を守ることも安全のためにも重要なのですね。
また、家族の物を勝手に捨てたり、捨てることを強要しないことも大事とのこと。家族で揉めてしまったらせっかく始めた生前整理が頓挫してしまうことになります。大切な思い出を否定しないで、この機会にコミュニケーションを取って進めることが、心の整理にも繋がるのですね。
最後の注意点は、収納グッズを買わないこと。片付けで綺麗になっていくとついつい収納グッズを買いたくなるもの。ですが、収納グッズがあると逆に物を入れてしまったりと本来の目的から外れてしまう恐れがあるのだとか。
生前整理のメリットとは
では、実際に生前整理を行うことでどういったメリットがあるのでしょうか。家族が生前整理にあまり乗り気ではない場合、生前整理のメリットを伝えることで前向きにとらえてもらえそうです。河田さんによると生前整理のメリットは主に4つあるそうです。
①介護予防
河田さんの会社への依頼で一番多いのが、ケアマネージャーと呼ばれる介護支援専門員の方から、ご自宅が片付けられない方がいるので片付けをして欲しいという相談だそう。大半が物が散らかっていて、躓いて転倒してしまったりするリスクが高くなってしまっているのだとか。家を整理し不用品を処分することで怪我をしにくい、安全安心なお部屋づくりが老後の快適な生活に繋がっていくのは大きなメリットですね。
②災害対策
家に物が多いと、地震が起こった際にタンスの上から物が落ちてきて大怪我をしてしまうことも。でも家が片付いていればタンスが倒れたりしても避難経路が確保できる可能性が高まります。ごみの中に埋もれてしまって災害の際に発見・救助が遅れるなんて言う可能性も…。どこでどんな災害が起きるか予想がつかないからこそ、日頃から家を整理しておくことでその予防策にもなることは意外なメリットだなと感じました。
③遺志を伝える
広い家であれば一人ではなくご家族で整理を行っていくことも多いと思います。「一緒に片付けていくことで、ご自分のご両親が何を持っていて、どういった思いで何を大切にしているかというのを聞くことのできる良い機会になると思います」と話す河田さん。
特に知人からの贈り物や旅先のお土産、アクセサリー、そしてタンス預金などは家族の思い出や気持ちとともに伝えることができるのではないでしょうか。普段なかなかコミュニケーションを取っていない方は、この機会にご家族とコミュニケーションを取れると良いですね。
④快適な生活
最後のメリットは、綺麗な部屋になることで、心も整理され、快適な生活を送ることができることです。介護予防となるメリットと同じく、その後のお掃除や管理もしやすくなることで、豊かな老後を送ることができるのだそう。これは納得です!
年末年始や帰省のタイミングを活用しよう
生前整理は死後に家族に負担をかけないようにしておくためだけではなく、介護予防や災害対策など、老後に快適で豊かな生活を送ることができる一つの手段でもあります。
さらに家族とのコミュニケーションを通して思い出や気持ちを伝えることができる機会にもなるとのこと。普段遠方でなかなかコミュニケーションが取れていないという方は、年末年始をはじめとする帰省のタイミングを活用して話し合いをしてみてはいかがでしょうか。
次回はイベント後半のトークセッションにて、「両親と整理を進める場合のNGワードは?」「遺品整理の費用を抑えるには?」など、我々あおい不動産アドバイザーズや参加された皆様からの率直な疑問を河田さんに聞いてみました。
ぜひ後編もご覧ください!