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2023年03月08日

それは相続してよい不動産?③「高圧線下の土地」

これまで相続税評価額よりも実際の価値が下がる不動産として、「無道路地」、「有効宅地部分が少ない土地」、「境界が不明の土地」などをご紹介してきました。

その第3弾として、今回は「高圧線下の土地」についてご説明します。

高圧線とは?

相談者B子:「高圧線は街でよく見かける電線とは何が違うのですか?」

アドバイザー:「街中にも高圧線はありますよ。電柱で高いところを走っているのが高圧線、低いところから住宅の方に伸びているのが低圧線です。電柱の上の方に大きな缶みたいなのが付いているでしょう。あれが変圧器で、高圧を低圧に変換します」

建築制限があるため、高圧線下の土地は価値が下がる

相談者B子:「街中にも高圧線はあるのですね。どうして高圧線下の土地は価値が下がってしまうのですか?」

アドバイザー:「高圧線下には建築制限があるのです。その土地にどれだけのものを建てられるのかで、土地の価値は大きく左右されます。そのため、建築制限がある土地は一般的に評価額が低くなります」

相談者B子:「高圧線下はどのような建築制限があるのですか?」

アドバイザー:「高圧線下の土地は、建物の高さを送電線から3m以上低くしなければいけません。送電が35,000Vを超えると、10,000Vごとに15cmの離隔距離がプラスされます。登記簿には電力会社の地益権や地上権の登記があり、『電線路の最下垂時の電線から3mを控除した高さを超える建造物等の築造もしくは竹木の植栽禁止』などと書いてあったりします。建物だけでなく、植林にも高さ制限があるのです」

特別高圧線下の土地は、さらに厳しい建築制限

相談者B子:「高い鉄塔も見かけますが、それはどう違うのですか?」

アドバイザー:「それは特別高圧線です。170,000Vを超える特別高圧線下は、さらに建築制限が厳しく、水平距離3m以内には建物を建てることや、竹木を植えることができません。」

相談者B子:「厳しい制限ですね。土地の価格が下がるのも納得です」

アドバイザー:「もちろん無償ではありません。電力会社から線下補償料が支払われます。しかし、土地の価格の下落に見合うほどではないですね。ちなみに、敷地内に電柱がある場合も、電力会社から電柱敷地料が支払われます。年間数千円ですが」

相談者B子:「高圧線下の土地は評価額が下がる以外に、他にも何か影響があるのですか?」

アドバイザー:「見た目の圧迫感や風が強い時には風切音もあるでしょう。電磁波による健康被害を心配される方もいますが、これは<ある・ない>両方の意見があり、実際のところよく分かっていません。不動産の売買時には、高圧線は嫌悪施設として重要事項説明書に記載されるので、買主への心理的影響もありますね」

相談者B子:「高圧線下の土地は、なかなかデメリットが多いですね……。『この部分に建物が建ちませんので、見晴らしがいいですよ』なんて言って、セールスポイントにできないですかね……」

アドバイザー:「それは誇大広告になってしまいますね」

高圧線下の土地には要注意

何かとデメリットが多い、高圧線下の土地。ご実家の敷地に高圧電線が通っている場合は、相続税評価額よりも実際の価値が下がる可能性が高いです。一度確認してみましょう。

筆者:松橋 輝彦(まつはし てるひこ)