お問い合わせ
お問い合わせ
お知らせ

2022年08月22日

それは相続してよい不動産?①「無道路地」「有効宅地部分が少ない土地」

いつかは訪れる実家の相続問題。

不動産は現金とは違い、単純に分割できないため、様々な困難が生じます。

いざという時に困らないように、「不動産の本当の価値」を事前に知ることが大切です。

この記事では、相続税評価額よりも実際の価値が下がる不動産についてご紹介します。

「時価」と「相続税評価額」の違い

不動産の価値を知るためには、まずは「時価」と「相続税評価額」の違いを理解することが重要です。

時価とは

時価は文字通り、市場に出して売却できる価格=相場です。

相続税評価額とは

一方で、相続税評価額は、相続税を計算するために、一定のルールに基づき計算された価額です。

建物は固定資産税評価額、土地は路線価により計算されます。

公示価格の水準を100とすれば、路線価は80。なぜなら、相続税には期限があるため、急いで売却することがあるので、安くしてあるのです。

その他にも、様々な制限があることで減額されます。制限については、国税庁の定める財産評価基本通達に記載されています。

時価も相続税評価額も、どちらも不動産の価格になりますが、不動産の価格は簡単に机上計算できるものでしょうか?

相続税評価額が時価よりも高いことはある?価値が下がる物件の特徴①

結論、相続税評価額が時価よりも高い物件は存在します。そのような不動産を相続した場合、いざ売却しようと思った時に、「思っていたよりも低い金額でしか売れなかった」または「売却できなかった」なんてことも起こりえます。

では、どんな物件が価値が下がるのでしょうか。

対談形式で2つの事例をご紹介します。

1.無道路地 

アドバイザー:「上の図を見てください。①の土地は、普通に建物が建つ例です。一方で、②は建物が建たない例です」

相談者A子:「①と②で何が違うのですか?実家の家に似てますね。道路から奥に入っていて、静かでいいですよ」

アドバイザー:「①は4mの道路に2m以上接しているので、建築基準法上建物が建てられます。一方で②は路地の幅が2mに満たないので、建物が建てられません。接道不良により、再建築不可の不動産になります」

相談者A子:「実家は自転車を押して入れるくらいです。出入りできるのに問題ありなんですか?」

アドバイザー:「土地はそこに建物が建つかどうかで、値段が大きく変わります。A子さんの実家の路地は、おそらく2mをきっていますね。ご実家のリフォームはできますが、建築確認を伴う工事はできないと思います。そのため市場価格は大幅にダウンします。相続税評価額の計算(不整形地の40%評価減)より市場価格はもっと低くなる可能性があります。また、相続税評価額と市場価格の差は、大都市圏から郊外、地方へと行くほど大きくなります。路地で接している場合、となりのブロック塀がはみ出して2mを切っているという場合もあります。不動産会社に現地を見てもらった方がよいですね」

相談者A子:「無料査定のチラシが入っていた会社に聞いてみます」

2.有効宅地部分が少ない

アドバイザー:「先ほどもお伝えしたように、土地はそこに建物が建つかどうかで、値段が大きく変わります。例えば③の図のように、斜面の部分が多い土地ですと、土地の価格はかなり安くなります。また、敷地内に現在の基準に適合しない、危険な擁壁(高低差のある土地に作られる壁)があれば、その分土地の価格は安くなります」

相談者A子:「擁壁って石とか積んであるところですよね。うちの叔父さんの家がそうです。丸い石がしっかり積まれていてお城の石垣みたいで頑丈そうですよ」

アドバイザー:「それは玉石の擁壁ですね。既存不適格です。今の基準なら違う構築をしないといけません。規模により数百万円単位(さらにそれ以上?)の工事費用がかかる場合があります」

相談者A子:「えー!でもあちこちで見かけますよね?」

アドバイザー:「安全の基準は年々変わります。ご実家に擁壁がある場合は、崩れかけているところがないかもチェックしましょう。何もしないで大事故が起これば、土地工作物責任を問われることになります。修繕の際の費用も確認しておきましょう。そこまで確認した上で、不動産の市場価格を考える必要があります。」

相談者A子:「なるほど!調べる時間のあるうちに、動いておいた方が良いですね」

不動産財産を相続する時は、売却時のことまで考えよう

財産は、出口(将来における始末の方法)まで考えておくことが大切です。

その不動産を売ろうと思った時に、いくらで売却できるのか。そもそも、売却できるのか。実際に不動産を売却する、しないに関わらず、不動産の本当の価値は知っておいた方が良いでしょう。

不動産会社、税理士、宅建業者など、複数の専門家の意見を合わせることで、良い選択ができるようになります。

次回は、価値が下がる物件の特徴その2をご紹介します。

筆者:松橋 輝彦(まつはし てるひこ)