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活動報告

2023年07月28日

【代表西川のコラム】難題多き鎌倉山の土地売買

銀座八丁目金春通りで40年勤め上げ、昨年暮れにリタイアした名物ママから、鎌倉山土地売却のご相談をいただきました。

お相手は戦後の歴代総理大臣のうち何人かをお客様にしてきたお方。人生経験では私などひよっ子です。

ご先祖が鎌倉の宮大工だった縁で、本人がまだ30歳になる前に買ったという土地。昭和の実業家で江ノ電を経営した菅原通済が開発した高級分譲地の一角と聴かされて「またも面白そうな仕事が舞い込んで来た!」と興味津々。

しかしながら予備調査を進めると、いろいろと難のある土地だとわかってきました。

  1. 一部が土砂災害特別警戒区域に該当する崖地
  2. 道路と当該土地にかなりの高低差がある
  3. 前面道路が建築基準法上の道路ではない
  4. 上水道、ガス管等インフラ設備が来てない
  5. 埋蔵文化財包蔵地(まあ鎌倉ですから)
  6. 土地境界不明(雑草が繁茂し識別不可)

正直言って、売れるのかどうか疑問です。

そして現地調査したのが先月中旬。

緑に囲まれた静かな住宅地ですが、土地の起伏、アップダウンが多い。さらに当該地は道路面から擁壁までおよそ7~8mの高さがあったのです。予備調査時にGoogleマップで確認した際にはせいぜい2~3m程度かと甘く見ておりました。

さらに擁壁を覆うように雑草が生い茂り、どうやったら上部まで登れるのか見当もつきません。両隣りの家の斜面に階段が取り付けられていたので登ってみましたが、当該地は両隣りより更に高く、てっぺんを見ることができませんでした。

売るなら境界確定の必要があるので、土地家屋調査士に見積もりを出してもらいました。すると、土地は約70坪、隣地は両隣りと奥の3件。土地の価格は1,500万円ほど。ただし、境界確定を行うためには雑草を全て伐採してもらわないとできないとのこと。

雑草の伐採費用は100万円ほど。さらに建物を建てるには、行政からの許認可も必要。そして宅地化する場合は、擁壁のやり直しやインフラ敷設等、安く見積もっても1,000万円ほどの費用が必要です。

そこまでして建物を建てたとしても、実際に暮らすとなると、3階分くらいの階段を上り下りする必要があります。七里ガ浜の海でも見えるならまだしも、残念ながらそれも叶わず…。

「参ったな、こりゃ良い報告は出来そうもないなー」とつぶやきながら、一本手前の分かれ道から階段を上って奥側のお隣りさんへピンポン。瀟洒な建物の大きな玄関扉を開けて若い女性が話を聴いてくれました。

私は名刺をかざしながら「お宅のお隣りさんから土地活用について相談いただいている東京の不動産会社です。鎌倉山の土地は処分したいとの意向なのですが、手始めに雑草の伐採と測量、土地境界の確認を行う必要があります。境界確認の際には、お宅と接しておりますのでご協力をお願いしたいのです。それから厚かましいお願いですが、下の道路からだと擁壁と雑草を見上げるばかりで、上がどうなっているのかわかりません。ちょっとのぞかせていただけませんか?」と申し出たところ、丁寧ながら気安く応じていただきました。

「それともう一点、お隣りさんはちょうどお宅のリビングの庭先にあたるわけですが、土地を買い増しする、なんてお考えはありませんか?」と水を向けると、「この土地は父のものなので父に聞いてみないとわかりません。あいにく今は不在です」とのお返事。

「もしも関心がお有りでしたら名刺の番号にご一報ください」と申し添えておきました。

翌日、銀座の元ママに現地調査結果を報告したところ、私の意に反し「わかっていたわよ。簡単に売れっこないこと。でも誰も使わないから売っちゃって!いくらだっていいの」とチャキチャキしたお返事が。

そうは言われても固定資産税評価額が1,500万円近くある土地にタダみたいな値付けは出来ない。どうするべきか考えていたところ、先日お話をしたお隣りさんのお父様から入電が!

「先日訪ねていただいた者です。お隣りの土地の件、関心が無いわけではありません。しかしながら、自分は既に年金生活者であり高額ですとあきらめざるを得ません」とのこと。

お隣りさんにとっては、万一、開発業者に買われてしまい建物が建ってしまうとリビングからの眺望が塞がれる心配もある。なんにもせずに庭として利用するだけでも価額によっては価値があるはずと考え、双方が気持ちよく納得できる金額を見つけて話しを進めていくことに。

結果的に、土地の境界確認も不要。雑草の伐根伐採も不要。そのまんまの状態でお隣さんに土地を購入いただけることに。

難しい土地なので、鎌倉市役所をもう一度訪ねて、いくつかある細かい疑問点を全て確認したうえで、まとめ上げました。

買主となるお隣りさんのお父様は高齢のため、先日訪問時に挨拶を交わしたお嬢さん名義で購入するそう。

売主さんも、買主さんも、売買を急いではいない。しかし、買主さんのお嬢さんが来週からしばらく海外へ行ってしまい帰国は3か月後とのこと。

そして売主さんは登記識別情報(権利証)が見つからない。

権利証が見つかってから契約決済を同日に行ってしまおうとのんびり構えておりましたが、双方の都合でそれは叶わず、急いで契約を締結。司法書士さんにも立ち会ってもらい本人確認と登記用委任状を手配し、無事に契約が完了しました。決済は一か月後、買主さんはお父様へ委任していただいて執り行う予定です。

なお、契約の際には、15年前から施行されている犯罪収益移転防止法に則って本人確認を行います。その際にご職業をお尋ねするのですが、なんと買い手のお嬢さんは高名な音楽家でした。週明けに海外へ行くのは演奏のためとのこと。

このような方に初対面で実に気安く話しかけていたとは!

売主様、買主様、双方にたいへん喜んでいただくことができた今回の案件。最終引き渡しまで、きちんと扱わせていただく所存です。

そして今後は双方の相続コンサルティングを任せていただけるように頑張っていきたいと思います!!